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ユネスコ無形文化財遺産に登録された和食は、室町時代に本膳料理として成立し、
戦国時代に茶の湯の発達に伴い懐石料理として完成をみました。
中世までは、こうした料理を口にすることができるのは御成や茶会という儀式の場だけであり、
きわめて限定された場所でしか接することができず、一般庶民にはほど遠いものでした。
しかし戦国の騒乱が終わって安定した江戸時代に入ると、社会的な浸透をみせ、
一般の人々も広く味わえるようになり、まさに江戸時代とは和食の時代であり、
食文化が庶民の間にも広がっていった時代であります。
本講座では、そうした江戸の食文化の実態と意義を歴史的に明らかにしていきたいと思います。
第1回 「江戸の食料生産―政治と社会」 2023年1月14日(土)16:00~17:30
まず江戸の食文化の実相をみていく前に、その前提として食料生産の特質について考えます。
政治的には幕藩体制、経済的には石高制という特質によって、水田稲作を中心とし、水田のみならず畑地や屋敷・山林までも検地によって把握され、すべてを米に換算して上納する社会でした。
インフラが整い食料の流通も発達していましたが、政治的には閉鎖的な側面もあり、そうしたシステムが食文化の対極にある飢饉という状況を惹き起こすこともありました。
第2回 「江戸前期の食文化―食文化の開花と展開」 2023年1月28日(土)16:00~17:30
江戸の食文化は、寛永期には公家や武家あるいは上層の商人たちのものであったが、元禄期頃から新興商人などの活躍によって、次第に社会の中下層にまで及び始めました。何よりも貸席料理屋という特異な形ではあったが、料理屋というシステムが成立をみて、料理書も出版されるようになりました。
さらには西鶴の小説に記されるように、商取引の接待に料理が用いられ、伊勢講などの旅行でも料理が楽しみになっていきました。
そうした江戸前期の料理文化を探ります。
第3回 「江戸後期の食文化―料理本と料理屋の展開」 2023年2月11日(土・祝)16:00~17:30
江戸の食文化が真に庶民のものとなるのは、宝暦~天明期と文化~文政期においてですが、これはちょうど享保の改革・寛政の改革・天保の改革の谷間にあたります。幕府はもともと自給経済を基調としていましたが、この二つの時期には消費経済が優先され、それが食文化の繁栄をもたらしたという事情があります。こうした食文化の発展と展開について、料理本と料理屋の問題に焦点を当てながら、出版文化の問題も含めて、その具体的な様相をみていきます。
第4回 「江戸庶民の食文化―豆腐・麺類・屋台」 2023年2月25日(土)16:00~17:30
ここでは安くて栄養価が高くもっとも身近であった豆腐など、江戸時代の人々がどのように知恵を絞って食を楽しんでいたのかをみていきます。また簡便な食事であったソバやウドンについても、その供給体制も考慮しつつ、屋台文化についても考えます。さらには江戸の庶民の口福を支えた発酵調味料の問題についても注目します。この発酵調味料の大量生産という社会的事情が、屋台の味を支えるなどして、和食の社会的普及をもたらしたからです。
第5回 「江戸における肉食の実態―近代への前提」 2023年3月11日(土)16:00~17:30
かつて日本人は肉食をしなかったと考えられていますが、古代国家が肉食を忌避する政策を採り、中世を通じて肉食は遠ざけられていきました。これは仏教の影響よりも、米の生産を優先させるために、肉食などを穢れとして排除してきた結果でした。それゆえ米を至上の食物とした江戸時代において、その傾向がもっとも強まったのです。しかし実際には、江戸時代においても肉食は行われていました。その実態を検証するとともに、近代における変容も考えます。
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